日本の空は航空法がルールを定めています。ですが、航空管制官という文字は航空法のどこにもありません。第96条(航空交通の指示)に安全かつ円滑な航空交通の確保をするため国土交通大臣が指示する、と書かれています。また、航空法を補足する航空法施工規則では、国土交通大臣の権限で管轄が違う2人に航空管制を担当させる法律になっていて、主に空港周辺の飛行場管制業務やターミナルレーダー管制業務は地方航空局長(東京、大阪)、もっと上空の航空路管制業務は航空交通管制部長、と分けています。
目次
航空管制官の指示は国土交通大臣の命令です。
日本の空を飛ぶなら権限を委譲した航空管制官に従いなさい、と航空法は言っています。
それから航空管制官の業務に関する規定が書かれた「航空保安業務処理規程 第5管制業務処理規程」には、規定上の定義が相変わらず堅苦しい言い回しで記載されています。
航空管制官(Air traffic controller。以下「管制官」という。)
管制業務を行う資格を有し、かつ、当該業務に従事している者をいう。
航空管制官がなぜ存在しているかの根拠といえば、こんなところです。
管制官が現場に配属してから受ける試験
には、筆記、技能、口頭試験の3種類があります。技能試験は、実際のパイロットとの交信を試験委員がモニターして評価する試験、口頭試験は一対一で専門的な知識や難しい判断を想定した質問で総合的な理解度を測る試験です。
航空保安大学校の研修を終えてから
初めてこの口頭試験を受けるのは、航空管制官になるための試験のときです。筆記と技能試験を終えて疲れ切った頭を振り絞り、密室で試験委員から出される問いに自分の考えを述べていきます。当時、自分が受験したときは、口頭試験が始まって大方の質問が終わるまでに30分くらい経っていました。すると、口頭試験の終了予定が近づくにつれ、合否の結果が気になり始めます。
そしていよいよ、試験委員から最後の口頭問題が出されました。
「航空管制官の定義とは何ですか。」
予想外の出題に少し戸惑いながら、きっと黒本(管制業務処理規定)にある航空管制官の定義を答えれば正解だろう、と考えて正確には文言を記憶していなかったものの、
「航空管制官としての資格を有し、管制業務に従事するものです。」
と答えました。
その回答に対し試験委員の方の口から、
「それでは、明日からその航空管制官として業務に就いてください。」
と、告げられた瞬間、密室で張り詰めていた緊張感はどこかへ消えました。あまりにあっさりとした合格通知だったので、まだ喜びも追いついてこれないほどでした。
試験を受けたのはこの時が初めてだったので気がつきませんでしたが、本当は口頭試験が終わったあとも結果は伏せられていて、改めて所属するチームの統括責任者と一緒に担当の試験委員から合格か不合格か言い渡されるのが通常の段取りです。
いつも訓練で厳しい面ばかり印象的だった方が、実はそんな心情こもったサプライズ合格発表をしてくれていたことに気がついたのは、新人だった自分にも経験を積んで訓練生という後輩が出来た頃のことです。
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