管制官は交信をしながらよくメモを取ります。パイロットから気象情報の報告があったときは風向、風速、高度などの数字をメモし、トーイングから呼び込みがあればトーイングの運転手に応答するよりもコールサイン(無線で呼び出すときの名前)をメモるほうが先!というくらい重要です。
ヘッドセットの差込口や航空管制に必要な情報が表示できるタッチパネル式のモニター等を備えた管制卓の上には、ペンとメモが必ず置いてあります。また管制卓に並ぶスイッチには、とっさのとき混同して間違えないように装飾や工夫が施されています。
ストリップにも書き込むことが多いので、素早く第三者が見ても誤解がないような字を書くことは、航空管制官にとって必須のスキルです。
理想の管制官は世界で初めての管制官
アメリカのミズーリ州で生まれたArchie W. Leagueは、ユニークな発想とユーモアある人柄で知られていました。残された2枚の写真は笑顔でサービス精神たっぷりな映りにも見えます。手押し車に椅子とテーブル、あとはメモ帳に水と軽い昼食を持っていつも彼は現れました。滑走路の脇でじっと待って、飛行機がやってくれば離着陸の許可を2種類の旗でパイロットに離着陸の許可を伝えました。
許可できない場合は赤い色の旗を振るのですが、許可する場合の旗は白ではなくてF1レースで使うようなチェッカーフラッグでした。これは推測ですが、着陸して飛行を終えることをレースのゴールシーンになぞらえてチェッカーフラッグにしたほうが、直感的で分かりやすいしパイロットから見て面白いサービスになると考えたような気がします。
また、大きく広がるパラソルを見ていると、地上から高さ数十メートルの管制塔に差し込む日差しを防ぐ電動のロールスクリーンとイメージが重なります。工夫、独創性、ユーモア、サービス精神、自信ある笑顔、アーチーリーグの表情は理想の管制官の方向性を示しているようにも思えます。
1973年にワシントンポストから当時の仕事振りについて聞かれた際は、
“It wasn’t so complex, we had a red flag to tell planes we didn’t want them to do what they were doing. And then we had a checkered flag to tell them it was OK.”
「そんなに複雑じゃなかった。彼らがしたいことを私たちがさせたくないときは赤い旗を振る。それからチェッカーフラッグを振ってOKになったことを伝えた。」
旗の意味を説明するときに、departure(出発)やarrival(到着)を使わないでシンプルに本質を伝えられることが、すでにコミュニケーション能力の高さを証明しています。
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