航空管制官

飛行機を華麗に操る地上管制席 – グランドコントロール

地上管制席背景

航空管制官の様々ある役割担当の中で、もっとも分かりやすい業務ポジションが滑走路担当の管制業務です。

僕は航空管制官の存在すら知らずに20年以上生きてきて平然とな〜んも考えずに飛行機に乗っていましたので、あの世界がどれだけ未知のものとして捉えられているかよ〜く分かります。おそらく飛行機に詳しくない方でも共通に既知としていることは、飛行機というのは滑走路上でスピードを加速して浮遊し出発する乗り物であり、到着するときは滑走路に着陸してガタガタ揺れながら騒音とともに減速する、ということくらいかと思います。

ですが、滑走路を担当するポジション以外の管制承認伝達席(デリバリー)や、今日のテーマである

 

目次

地上管制席(グランドコントロール)

 

に関しては、何をやってるのかイメージが付きにくいと思います。航空の世界というのは背景の知識がないと、何のためにそれが必要なのか想像することも難しいほど複雑なため、別に飛行機を見てもそんなに興味も湧かない一般の人には、理解されにくいものになってしまっても仕方ありません。

 

今日はそんな存在感の薄い影の立役者にスポットライトを当ててお話しします。

レーダー画面を使った仕事も解説したいのは山々ですが、まだこのブログも始まったばかりです。3か月もあればあっという間に飛行機や航空業界を語れるほどの知識が付くと思いますので、もう少しお付き合いください。

 

えっと、これはさすがに皆さんご存知のことかも知れませんが、

あなたが乗り込んだ飛行機はいきなりガンガンスピードを上げて、滑走路上で離陸を開始するわけではありません。

 

乗り込んだ場所(空港ターミナル)から滑走路の手前までは、普通の車みたいにトコトコと誘導路を走っています。空港の規模によっては空港内を延々走り回って、ときに他の航空機の合間をすり抜けて、ときに先に出発する飛行機の離陸待ちによる渋滞に捕まりながら、何十分もかけてようやく滑走路の離陸開始点に到着することができます。あくまで大空港の話ですが。

 

と、長々説明するよりも目で見た方が早いと思いますので、地上管制席 – グランドコントロールとはどのようなものかご覧ください。

 

 

車で走っていても信号がない交差点は危険がいっぱいです。空港の地上面も同様で、同じような速度の飛行機が同じようなタイミングで交差点に差し掛かることは日常茶飯事です。ちょっと上のイラストだけでは物足りないし、実際の業務の実感が湧かないと思いますので、次にグーグルマップを使って空から羽田空港を眺めてみましょう。

 

 

羽田空港内の誘導路形状はとても複雑に見えますね。

すっごく端的に表現すると、地上管制席の業務とはまさにこの複雑な形状のなか絶え間なく通過する飛行機を管制塔から目で見てどう指示すれば良いか判断し、ぶつからないように誘導するということに他なりません。

正確に言うとぶつかる、というのはお袈裟な表現です。飛行機には空港内を走行する制限速度というものが航空法で定められており、航空管制官に止まれ!と急に指示されても安全に止まれる速度で走行しています。なので、たとえぶつかりそうになったとしても、そこは冷静にパイロット同士が目で見て安全に停止できるケースが通常とお考えください。

飛行機は車道と違って1本の道路上で相互通行ができませんので、パイロット目線で言えば自分が今走行している道の反対方向から飛行機が来た場合は、他に曲がれる交差点が無いのであればもうそれ以上進むことはできません。

しかも飛行機はそもそもバックができない乗り物ですので、その状態になってしまったらトーイングカーという飛行機を牽引する専用の車を個別に用意しないと、対面してしまった2機の飛行機を救い出すことはできません。

 

この1本道の対面状態を、飛行機の頭と頭が向いあっていることから

ヘッドオン

と呼び、そうならないように安全かつ効率良く飛行機の交通を管理する仕事、それこそがまさに地上管制席の役目と言えます。

 

このポジションは飛行機ラッシュの時間帯にうまく指示が出来るようになると、喋りっぱなしでも喉が乾くことすら忘れるほど充実した時間を過ごすことができます。

 

航空管制官ってどう考えても大変な仕事ですけど、やりがいだけは世界一じゃないかと錯覚するほどの魅力があります。

辞めた今も自分の時間を捧げてこんなブログを書き続けちゃうくらいですからね。心から素晴らしい仕事だと思いますよ。

 

それではまた明日。

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