管制塔

空港に雷落ちたら飛行機押してる場合じゃない

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航空管制官の夏の風物詩といえば積乱雲です。梅雨の長雨も厄介な日がありますが、瞬間的な爆発力は積乱雲が持たらす雷雨に遠く及びません。外で雷がゴロゴロ鳴っているとき、空港の交通状況はどうなっているのか知らない方も多いでしょう。

説明を始める前に航空管制官の変な日本語表現に新たな言葉を追加しておきます。

  • 押す

    飛行機の出発準備完了後、ボーディングブリッジが外れてプッシュバックを開始すること。”押す”の主語は飛行機を対面から押し出すトーイング車両に当たるので、飛行機は”押される”になるはずだが、現場の管制官はよくプッシュバックを略してプッシュと言うので、飛行機がプッシュバックをする→プッシュする→押す、と変化していった可能性が高い。

目次

飛行機は雷が落ちても平気です

雷が落ちても車の中にいれば安全、という話がありますが、これは車という金属の物体が雷を吸収して地面に逃すためで、飛行機も同様にキャビンの中にいれば問題ありません。飛行機はそもそも雷が落ちてもボディーに大きな損傷が生じない設計で作られており、地上でも上空でも雷対策は万全です。

飛行機の主翼や尾翼には静電放電装置(スタティック・ディスチャージャー)という避雷針の代わりになる2、30本くらいの細い針がついており、加えて機上の気象レーダーで雨雲の源である積乱雲を避けて飛行しているので、雷が直撃して大破するようなことはまず起きません。

制限表面が空港周辺の建物を低く抑える

空港の周辺というのは、航空機の離着陸が安全に行える基準で建築物の高さが制限(制限表面←wikipedia)されているため、だだっ広〜い平野と大差ありません。もしも滑走路のすぐそばに高層マンションが建てられたら、飛行機がゴーアラウンドしたときなんかいかにも危なさそうですよね。制限表面は空港付近航行の安全上当然の基準であり、そのおかげで空港の敷地内で一番高い建物は管制塔です。もちろん着陸やり直しの飛行経路が管制塔付近を通ることはありません。

空港から見上げた景色が広く感じるのは、制限表面という基準によりある意味で景観が保たれているからです。

落雷時の総員退避発令

積乱雲と空港

飛行機や車の中にいるだけなら安全ですが、貨物の運搬やプッシュバックの準備等、外で作業するのは落雷事故に遭う危険が高まります。そのため積乱雲が空港上空にあるときは地上作業員に退避命令が出ることも少なくありません。

一度発令されれば、航空機の飛行への悪影響がどうとか考える以前に、出発する飛行機はプッシュバックすらできません。さっきまでひっきり無しに管制官を呼び出して、遅延はどれくらいになるかと尋ねるパイロットも一斉にいなくなり、出発機からの呼び込みがパタっと止まります。

遅延?そんなの雲に聞いてくれ。もうこうなったら怖いものはありません。空港全体で雷が去るまで雨宿りです。

出発機がいつまでも出ていかないとなると、到着機もその飛行機が駐機しているため旅客を降ろせなくなり、そうこうしているうちに誘導路やエプロンに駐機スポット待ちの飛行機が溢れ始め、飽和状態を越えれば到着機が滑走路に着陸することすら制限しなければならなくなります。

このように、積乱雲が空港を直撃したら交通機能はマヒします。それが飛行の安全に関するどうこうではなく、地上作業の悪影響でそうなっていることがある、というのは意外に感じるのではないでしょうか。

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