テレビで飛行機のニュースが流れるときというのは、大抵は事故が起きてけが人が出ましたとか、墜落してブラックボックス(本当は赤いんですけどね)を捜索中とか、視聴者にとって刺激的な内容ばかりです。飛行機や航空業界について何も知らない、至って普通の方々が聞けば当然のように飛行機は危険な乗り物と思ってしまうでしょう。
地上で起きた不具合や事故ならまだ何とかなりそうなものですが、飛行中にそのような事態に遭遇すれば成す術がありません。それも1機単独の出来事ではなくて2機同時に起こり得る最も危険な状態として挙げられるのが「ニアミス」です。
「ニアミスが発生しました。」と聞けば、ただそれだけで理解してしまえるほど、危険の象徴として言葉が一人歩きしてる気がします。では、
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ニアミスって飛行機間の距離何メートルですか?
そう聞かれて答えられる方はいないと思います。定義がないからです。アメリカの航空ルールを統括するFAA(連邦航空局)では数値が決められていますが、その数値も飛行機の速度や向きによってはあまり意味を持ちません。
え、でもパイロットが緊急回避すればニアミスでしょう?
一見すると正しいですが、すると今度は緊急回避とは何なのか説明しなければなりません。飛行機にはTCAS(空中衝突回避装置)というシステムがあり、衝突の可能性がある場合にその2機に対して、一方は上昇、もう一方は下降という風に自動音声で回避措置が出ます。この警告は管制官の指示よりも優先しなければならないルールですので、飛行機には当たりたくても当たれないくらいの仕組みがすでに構築されています。
普通に聞けばこのTCASによる回避措置=緊急回避と同じように聞こえますが、このシステムによる回避措置はその指示に従ってさえいれば、キャビンの旅客にすら気づかれない程度の緩やかな上昇、降下で危険を回避することができますので、緊急と呼ぶには余裕があり過ぎます。
それでは航空管制官が守るべき間隔とは
安全な飛行を約束するために定められた飛行機間の距離を管制間隔と呼びます。管制間隔は航空管制官が業務をする上で最も意識する距離で、レーダー画面上に映る2つの点を引き離しておかなければならない距離とも言えます。
飛行機は3次元で飛んでいますので、この距離には垂直方向と水平方向のそれぞれで決められています。画像は元祖2次元ファミコンのスーパーマリオですが、マリオも目の前の敵に当たらないようにするには敵の進行方向と逆方向に進むか(水平方向)、ジャンプしてかわすしかありません(垂直方向)。
管制官はゲームのようにコントローラーを握って飛行機を動かせません。出来ることはパイロットに言葉で伝えてそう動くように指示することだけです。もちろん管制官に言われなくても近づけばマリオにも敵が見えていますので、管制官が何もしなければギリギリでTCASが発動して自分でジャンプします。
この左のマリオは上昇中か下降中かはわかりませんが、管制官はレーダー画面を見て得られる情報から3次元の動きを把握できます。このイメージで言うなれば、
レインボーの丸=管制間隔です
別にこの丸が重なったところで、なんかボタン押せばどうにか当たらずに済むと思います。そうなんです。あくまでこれが管制官に課せられた守るべき間隔であって、その距離というのはパイロットによる回避措置が間に合う前提だけども、でもやっぱりこの距離を切るとそれなりに焦る、そのような間隔なのです。
具体的な距離については、レーダーの性能、性質により若干異なりますので詳細は避けますが、
管制間隔欠如≠ニアミス
ということだけご理解頂けたら今日は十分満足です。
ではでは^^
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