個人的な昔話を急に始めます。といってもこのブログ自体ほとんどが経験談ですが。航空管制官を辞めた理由を聞かれることが増えてきたので、改めて振り返ってその時のエピソードを書きたいと思います。
このようなブログを何年も続けているくらいなので読者の方々にはご納得頂けそうですが、私は航空管制が嫌になって辞めたわけではありません。航空管制官は本当にやり甲斐があって打ち込める素晴らしい仕事だと思っています。辞めることを上司や同僚に告げるときにも、辞めるという決心に変わりはないが誰かに雇われて働くなら管制官が一番いいと今でも思ってる、と実際に伝えていました。
おそらく自分のなかに、誰かに守られるよりも自分の力で何かに挑戦したい、という根っからの性分があったんだと思います。インターネットが普及することでこれまでとは違う形で成功する人達が出てくるにつれ、心の底にあったその欲が抑えられなくなったのです。日本で会社を設立できるほどの資金力がなくても、今後成長が見込まれるアジアの物価が安いところに移住して起業し、インターネットを使った新しいサービスを産み出せば今からでも成功する可能性があるのではないかと考え始めました。それからは、勤務後や休日のプライベートをパソコンの勉強に費やしました。そうやって休みを惜しまず仕事と勉強を続ける日々を過ごしているうちに、大学卒業の年に就活で悩んでいたときの時間がフラッシュバックしました。
高校生から大学までずっと理系の道を進んできたので、社会人になったらメーカーに就職して技術職・研究職に就くというのが自然な流れだったのですが、いざ就活の時期になって就職か大学院か迷ったときのことでした。本当に自分がやりたいことは何なのか考えた挙げ句出した答えが「航空管制官」だったとわかり、苦手だった英語と国家公務員試験の範囲である文系科目の勉強を始めたときと、航空管制官を辞める決心をしてからの行動は全く同じでした。
あの時、大卒資格を失ってまで管制官試験の勉強一本の浪人生活を選び、ついに航空管制官採用試験に受かったとき確信したのは、
「ずっと努力して積み上げてきたものがあれば、崩したときのエネルギーは更に大きなものを生む力になる」
ということでした。このときの成功体験が、航空管制官として歩んできた8年間のキャリアを棒に振ってまで挑戦しようとする無謀な賭けに一歩踏み出す後押しとなりました。今回の積み木崩しは大卒資格を捨てるどころじゃなかったので、挑戦への必死さは自分史上ナンバー1でした。
さて、別ビジネスのその後の話はさて置き、管制官を辞めたらもう一つどうしてもやりたかったことがありました。それは、もっと日本における航空管制の理解度を高めたいということです。欧米では航空機の運航はパイロットではない第三者により管理されていることが当たり前に理解されています。欧米は日本より先行して航空機産業が発達したため、航空事故が頻発したため管理の方法が議論され、Air traffic controllerを置く仕組を構築していった歴史があるからでしょう。その日本と欧米の格差をこれまたインターネットを使って改善したかったのです。(ここらへんは当時の認識です。今ではテレビドラマのおかげで日本での理解も大幅に進みました。)
まとめると、起業と航空管制についての情報発信という2つの願望が、航空管制官を辞めた主な理由でした。
辞めることを相談した方々の意見は見事に真っ二つに分かれました。やりたいことがあるならそっちをやったほうがいい、羨ましい、というような肯定的な意見と、どうせ成功しないから辞めておいたほうがいい、もったいない、という否定的な意見です。自分自身も実際は両極端の二択で揺れていましたが、管制官を定年まで全うするよりも元管制官となって外から影響を与えることのほうが自分らしいし、“航空管制を良く理解している民間人”という存在にも価値がある気がしてなりませんでした。もう一方の選択をしていても同じことを言ってるかもしれませんが、後悔は全く無く、我ながら良い判断をしたと思ってます。
今後どうなっていくか予想は付きませんが、パソコンを使った情報発信はライフワークとして続けていきたいと思う今日この頃です。
6 Comments
とも
2018年12月3日 at 8:24 PMはじめまして!
過去のブログ含め読ませていただきました。
なかなか管制官についての情報が今の時代においても少ない中、こちらのブログをみつけました、元管制官の方のお話は、とても貴重でした。
ブログを読んでいる中で、なぜお辞めになったのかは、気になっている部分ではありましたので、今回の記事はすごく良かったです。
今後も、ブログの更新楽しみにしています!
てっちりん
2018年12月3日 at 8:57 PMはじめまして。コメントありがとうございます。
ネット上でやってることなので個人情報につながることや私情のエピソードは避けてたのですが、もうフルネームも出てしまったし全部さらけ出す方向性に切り替えました。
といっても、裏情報を暴露!みたいなことは絶対にやりませんけど。
これからも気が向いたら見に来て下さい。
伊藤慎吾
2018年12月15日 at 6:53 PMエアバンドを聴いているものとして拝読しておりました。
僕も国家公務(地方労働局)を58歳で退職しました。なんだか親近感があります。
数年前に所沢の管制部にお邪魔して、定年後の再雇用の方が24時間勤務ローテに入っていると伺って、定数削減の厳しさに驚いたことがありました。
公務は目立たないし、それでいいと思っていますが、現場を知らない民営化論や定数削減論が一方的なものであり、それについては、なんとか発信していきたいと、暗中模索しています。
てっちりん
2018年12月15日 at 10:04 PM書き込みありがとうございます。「現場を知らない民営化論や定数削減論が一方的」というご意見には私も同意します。短期的に変わるようなものでもないと思い草の根運動をいろいろと行ってきましたが、余計なお世話と思っておられる方も多くいるのは事実です。いつか、これをやっていて良かったと思える日が来ることを信じて、もう少しだけ続けてみたいと考えています。
oscar
2019年12月17日 at 2:19 AMはじめまして。私も、外からでないと出来ないことをやりたい、と辞めたひとりです。大好きな管制に恩返ししたく、航空大国でネットワークを広げながら大学に通っています。志の高い方がいらして、励みになります。
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2023年11月2日 at 4:29 AMg6gxd5