航空保安大学校

自己体験のリアル訓練ストーリー

飛行機渋滞

現役時代に書いていた管制官のブログより、再アップ編集版をお届けします。

未来の自分に贈る励ましの言葉

投稿:2011/02/19

管制官は、国家試験合格後の航空保安大における研修を修了した後、各空港や航空交通管制部の現場に配属されます。航空保安大を出たからといってまだ一人前って訳ではないのです。初めて赴任した官署でも、次に異動する官署でも、「そこの現場で一人で仕事できる資格」を取るために勉強と訓練が繰り返されます。仕事場が変わる度に半人前に戻され、一人前になったら異動して、というサイクルが定年まで続きます。

つまり、ずーっと勉強の日々なのです。想像するだけで嫌気が差しますね。今回のブログは、現官署で訓練を終えることが出来たときの気持ちを忘れないよう記録しておき、次の官署の訓練で凹んだらまた読み返すつもりで、書いてみます。

大人になってから、こんなに怒られるなんて考えてもみなかった

当時の僕はこんな風に友達に話していた。シミュレーターではない本物のパイロットと初めて交信したときの感動も束の間、苦悩の訓練生活が始まった。

航空管制官の訓練とは、どうやら訓練担当(以下訓担)と呼ばれる一人の先輩管制官が、資格を取得するまでキッチリ管理するシステムで進められるようだ。

そう、言葉通りにキッチリだった。

管制官の業界で言うところの訓練とは、訓練を実施できる資格を持っている人に隣で聴いてもらいながら、資格が無い人がパイロットと交信することを指す。私の訓練担当は、訓練の実施方針の策定と一日のタイムスケジュール管理はもちろんのこと、英語で書かれた緊急時対応マニュアルの和訳の宿題、仕事後はファミレスが閉店するくらいまで長い反省会があり、プライベートで沖縄旅行に行くときでさえ那覇空港の管制塔見学を強いるなど、仕事前も仕事後も管制のことばかり考えさせられるように仕向ける人でした。

そして、自分が訓練中の交信はいつも聞かれていた。

訓練というのは、決して訓担が全て受け持つわけではありません。訓担もイチ現場の管制官として業務がありますから。ところが別室で業務をしているときでも、どっかしらで全ての交信を聞いている。そして事務所ですれ違い様に話す機会があれば、「あの時の指示は全然ダメだ」って説教が始まる。

訓担に直接訓練を受けるときはなおさら厳しく、管制室内に響き渡るくらいに怒られる。

そして僕は友達にまた話す。大人になってからこんなにこっぴどく怒られる経験するなんて考えてもみなかった、と。

一人前になる為の資格を得る試験を受けるには、訓担だけでなく他の多くの管制官からもrecommendation(以下リコメン)が必要で、その会議が毎月あります。私は参加したことはないですが、あの訓練生は今どんな状況でここが良くてここが悪い、ってことを話しあっているようです。

ある日、その会議の終わった後に呼び出されたことがあった。どうやら自分の訓練が予定よりも遅れてきていること、他の管制官から厳しい評価をされていること、が伝えられた。

日夜、管制のことばかり考えて、食事もろくに取らずに訓練を受けて、一生懸命なんて言葉じゃ形容して欲しくないくらいに限界ギリギリだったため、そのときのダメ出しはとても辛かったことを覚えている。

自分の不甲斐なさを責め、泣いても落ち込んでも意味がないことは簡単に想像できる現状で、あと何の努力をすれば良いかも分からなかった。

「社長!!何でもしますから!!」

と言っても、

「君にできることは何ない(-。-)y-゜゜゜早く帰りたまえ」

ってな状態。

まさに途方に暮れた僕は、仕事のあと家に帰ることすら拒み、気が付けばチームの筆頭に弱音にも似た相談を持ちかけていた。そんな心境だったからか、その時に言われた言葉は今も僕を支えている。

「君は周りに理解されにくい。でも、じゃじゃ馬ほど名馬になるんだよ」

訓練が始まって10カ月程度経った頃だろうか。自分でも実感できるくらいに、成長しているような気がしていた。管制室に怒号が鳴ることも少なくなり、「管制は楽しい」とさえ感じるようになった自分に気が付いた。

ある日の会議が終わった後、いつものように訓担とファミレスへ行き、リコメンが出たことを伝えられた。恥ずかしい話だけど、かなり無邪気な笑顔をしていたように思う。ゲラゲラ笑う顔ではなくて、まさに自発的な笑顔だった。

その時の気持ちをまた味わえるなら、もう一度訓練をしても良いと思ってしまうくらいに嬉しかった。

訓練に関わった全ての人にとても感謝しています。あんなに厳しく指導して貰えたことが、いまは本当に幸せです。まだまだエピソードはあるけど、あんまり書いても自己満足日記になりそうだから、訓練の話はこの辺で止めておきます。

※こんな訓練ばっかりじゃないから、これから管制官になる人達は重く受け止めないようにお願いします。

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