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飛行場の航空機取り扱い処理能力を高める
航空機の取り扱い機数が増えることは、経済の循環を促進して公共の利益に繋がります。成田国際空港のNAAや関西国際空港のNKIACのように民営化した空港会社にとっては、社員一丸となって伸ばしたい数字の一つです。飛行場の処理能力を高めるには何が必要かまずは整理します。
滑走路を新設
空港の取り扱い機数を増やすなら滑走路を作るしかない、というのが一般的な理解かもしれません。羽田空港拡張の歩みは滑走路の増設と共にありました。旅客輸送などの統計データでは常に上位の忙しい空港代表シカゴ・オヘアには滑走路が8本もあります。ならば、工事に励んで滑走路を増やし続けることが、空港経営を明るくするのかといえばそうでもありません。
滑走路には安全を確保するために最低限守らなければならない間隔が設定されています。滑走路の使い方を知れば、自ずと処理能力の限界値は理解できます。
離着陸許可を出す判断基準
滑走路上に航空機がまだいる状態で後続の出発機が離陸を開始したり到着機が着陸してしまうことが危険なのは、万人が納得するところでしょう。対象物が航空機ではなく滑走路上に落下物がある場合も同様ですが、あくまで禁止されるのは離陸滑走、着陸滑走だけなので滑走路上を走行(タキシング)することは問題ありません。
滑走路の使い方をケーススタディー
ここでは、滑走路上で離着陸が絡む交通状況の具体例をイラストで確認し、滑走路の有効活用を考えるヒントを探ります。まずは滑走路が安全な状態について。
出発した航空機の全体が滑走路端から抜けている。
離陸後に旋回して滑走路から遠ざかる。
先行の出発機がいる場合、後続機に離陸または着陸を許可できるのはこの2パターンです。滑走路という長方形のエリアからいなくなれば安全というシンプルなルールです。前述したとおり、ラインナップ(離陸の準備に向けて、滑走路に入って待つこと)は許されているので、後続する出発機を連続して離陸させるならラインナップを指示しておいて、上記の状態がくるまで後続機の離陸許可発出を待ちます。
つづいてはこの反対となるケースです。
離陸滑走中か浮遊して滑走路の直上にいる。
着陸許可を受けた到着機がいる。
滑走路を横断中の航空機がいる。
Occupiedは”占有されている”という意味です。到着機については、管制官が着陸許可を発出したかどうかが占有状態を決定するキーポイントになります。個人の采配ではなく客観的な安全の間隔を定める目安として、パイロットに着陸許可を発出した地点と滑走路に接地するまでの距離に、何かしらの決まりがあっても良さそうなものですが、着陸許可発出の時期については以下の文言によるルールしか存在しません。
b 到着機が滑走路進入端から2海里の地点(場周経路を経由して着陸する到着機にあって は最終進入)に達しても着陸許可が発出できない場合は、可能な限り先行機に関する情報を 提供するものとする。
c 着陸許可を発出した後は、同一滑走路を使用する他の航空機に対し、当該到着機の前方 においては、離陸、滑走路上における待機及び走行、並びに滑走路の横断を許可してはな らない。
引用: 第5管制業務処理規定
進入中の飛行機が2マイルの位置から接地するまでの時間は約1分。パイロットは滑走路の状況を肉眼で十分に掴める距離ではありますが、少なくとも1分前には着陸が許可されるかどうか知っておきたい、ということに他なりません。逆にこの”2マイルまでに管制官から何か説明を貰える原則”のおかげで、パイロットからの不要な確認を減らせている利点も感じます。
最後に、滑走路の誤った使い方(Forbidden)と正しい対応(Correct)について比較をします。
↓
滑走路がOccupiedなら停止線の手前で待機する。
↓
滑走路がOccupiedなら着陸復航する。
↓
滑走路の横断中は出発機を停止させる。
着陸許可発出の締め切りに定めはありませんが、ゴーアラウンドを指示しなければならないタイミングについてはこのように書かれています。
d 着陸許可発出の時期に関わらず、到着機が滑走路進入端を通過する際に滑走路における 間隔が設定されないと判断した場合は、復行を指示するものとする。
引用: 第5管制業務処理規定
担当する管制官個人の予測、判断に委ねられることが明確にする文言が書かれているだけで、滑走路の使い方にはもしものときに責任追求を和らげてくれる頼みの綱など用意されていません。
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