本日の主役はトップ画像でスポットライトを浴びる昭和の代表カセットテープです。
アナログの代表とも言えるこんなものが、少し進化していまの航空管制官を支えています。
今日の内容は元航空管制官の独自の視点により切り取られている可能性がございますので、国土交通省の考えとは何ら関係のない航空マニアによる考察としてお読みください。
目次
航空管制官は決して甘い仕事ではありません。
全ては安全と効率のため、良かれと思ってギリギリの判断で指示をしていることに変わりはありませんが、いつもうまく行くわけではありません。
それには様々な要因が考えられますが、航空管制官を困らせる要因の代表としては、
交通量増大時のプレッシャー
が第一に挙げられます。
航空管制官はパイロットの呼び込み(要求)に対して、それに応じることを基本としています。
パイロットは出発したいから離陸の許可を要求し、着陸したいから着陸の許可を要求するべく管制官を無線通信で呼び出すわけです。なので例えば着陸許可が発出されないまま、飛行機が滑走路に向けていつまでも降下し続ければそりゃパイロットだってもちろん、
「着陸許可、まだですか。」
と突っついてきます。ちょっと言い方が悪いので訂正すると、着陸許可発出の確認のために突然(管制官は呼び込まれると考えていなければ)呼んできます。
そうやって航空管制官は、
いつもどこからくるか分からない通信で呼び出される
のを待つことから始まるのです。
一度、通信設定したならばその航空機は自分が安全を守る義務を課せられたことを意味し、次の管制官に通信を渡すまではいつ何が起きても対応出来るようにその航空機に注意を払わなければなりません。時には目で直接見て、時にはレーダー画面で位置、高度、飛行方向を確認して。周りの交通状況を常に把握しながら。
自分の周波数にいるパイロットの数が増えれば増えるほど、あれがこうなったらこう言わなきゃとか、あの飛行機は指示された通りに動いているかとか、こうなるだろうから前もって次の管制官に伝えておかなきゃ、とか頭の中は予測、判断、指示のトライアングルがぐるぐる回っている状態になるわけです。
そんなわけでピーク時間帯は緊張の連続です。
ですが、航空管制官には自分を守る術があります。
その守る術があるからこそ、ギリギリのタイミングで時にパイロット自身の予想を上回る、非常に良い判断をしてその指示を出すことができる、と個人的には考えて仕事をしていました。
航空管制官が使用する無線通信というのは常に録音されています。それは無線周波数を使って通信をしている全ての声を録音するとともに、管制組織内部でのやり取りで使った音声電話等も含めてレコーダーに残されています。
何かちょっとしたトラブル等があればその録音した音声(指示内容、パイロットやトーイング運転手の受け答え)や、レーダー画面の機影等のデータを解析して、実際のところはどうだったのかを客観的に調査することができます。
最近は車載が当たり前になりつつあるドライブレコーダーのようなものとお考えください。
飛行機で言えば有名なブラックボックス(フライトレコーダー)ですね。実際は暗くても見つけやすいようにこんな色をしているそうですが。
つまり管制官が、「自分の指示は規則に従った裁量の範囲内で判断したものであり、その後の対応も適切な処理がなされていた。」と、堂々と証言するためには
自分の指示と相手の復唱を確実に残す、
これ以外にありません。
日常生活では言った言わないで食い違うことは良くありますが、航空の世界でそれは許されません。
自分はちゃんと指示したって主張してもそれは通らないのです。
自分は指示したし、相手が理解して同じ内容に一致する復唱を言っていたのを聞いた、
と主張して、それが事実でない限りは非は管制官側にあると取られても仕方ありません。
言いました、は言うな
曖昧な返事はきちんと正せ
それが自分の身を守る一つの方法となります。
これをご覧になっている方で航空管制官と通信をする機会がある航空関係者にお伝えしておきます。
復唱は自分が聞こえた通りにハッキリとどうぞ。
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