前回のATCエアライン無線英語学院のおさらいです。
無線通信で会話する場合も普通に日常会話英語を使って問題はなく、相手に通じさえすれば良いようなところもありますが、過去の様々な言い間違い/聞き間違いの教訓から定められたルールに関しては共通の認識として学習しておかなければなりません。
英語が母国語じゃない人間にとってはエル”L”とアール”R”の発音の違いが難しいと感じるように、同じような発音というのは誤解を簡単に産みだす要因になります。日常会話だったら誤解されてもそれを正せば良いだけですが、指示と復唱の嵐が吹き荒れる無線通信の中では、その訂正や確認に使う時間すらお互いのストレスになります。
目次
アイラブユーは君のことじゃないかもよ!
こんなこと考えたこともないでしょうね。
僕は昔、塾の講師をしていた過去もあるのですが、あらゆる英文法の解説に男女の恋愛で使うフレーズをその例として教えていました。学生は英語には興味ありませんが、恋愛模様にはとても興味があることに気がついたからです。
感情込めた求愛フレーズで発音練習、英語の授業は恋バナ最強説です。
アイラブユーはなぜI love youとして認識できるか考えてみてください。アイラブはI loveとして認識できるのはまだしも、ユーをyouって聞き取れるのはなぜでしょう。ユーはアルファベットのUである可能性はありませんか?
この人、こんな質問してるけど頭大丈夫かって思われている方、正常です。
でもここ無線英語学院じゃ当たり前の疑問です。
だって、僕はアルファベットの中でもUを愛してやまないんです。あの形を見てるだけで安らぎます。将来はUの名前が付く人と結婚したいとすら思ってます。そんくらい僕、
I love U.
なんです、って言いたかったのかもしれないですよね。
…現実世界の会話じゃこれはありえないでしょうけど、でもそのありえないって考えは主観的だということに気がついて欲しいです。ありえないことなんてありえないんですから。
無線通信をするときの大原則ルールとして、アルファベット1文字を読む場合には特別な読み方を使うこととなっています。ですので、アイラブユーの言い方ならI love you◎として受け取ってオッケーなんですが、I love Uの方を言いたい場合は
アイラブユニフォーム
と発音しなければなりません。Uの読み方は必ずユニフォームです。Aはアルファ、Bはブラボー…と定められていてそれが続く果てのUはユニフォームってことです。
そういえば、I love youのアイもまたアルファベット1文字ですね。
Iを普通に、私の意味で使うならアイのままでいいですが、文字としてのアイ”I”ちゃんが数あるアルファベットの中でもユー”U”くんという文字を愛している意味で伝えたいなら、
I love U = インディア ラブ ユニフォーム
と発音しなければなりません。Iはインディアと定められています。
なんでこんなにくどくどと説明するのか。
それは、相手と面と向かわない無線通信で、母国語も違う初めて話す相手と緊張感を抱えながら確実にコミュニケーションを取る、それがどれだけ難しいことなのか伝えたいからです。
もうね、航空管制官の指示というのは単純明解がともかく一番なんです。相手がネイティブなら分かってくれるでしょうけど、文法とかカッコイイ言い回しとかはそこまで考える必要ありません。自分が英語を上手に喋れるなら、相手の英語のレベルまで自分が降りてって合わせてやるぐらいじゃきゃダメなんです。
パイロットから右に曲がっていいですか、と言われたらIt is O.K.(大丈夫だよ)って答えちゃダメ!
右に曲がっていいですか、に対する応答はMake right turn.(右折しろ)です!
そうやって返答してあげた方が聞き取り手にとっては何倍も理解しやすいんですよ、実は。
最後にI love youに関する小話を一つ。
その昔、僕が中学生だった頃に最後の授業で当時の先生から聞いた話です。
君はアメリカ人の女の子に恋をしました。
その女の子に今日こそ告白するぞ、という意気込み満タンでニューヨークのエンパイアエステートビル屋上にその子を誘ってお出かけします。
102階の展望台、周りを見渡せば100万ドルの夜景が広がり、このシチュエーションなら完璧と自分を奮い立たせます。
(よし、今だったら好きだって言える。いまだ!いま、いま!)
あのさ、、、実は僕、、、
I you love.
ガーーーーーーーーン!!言葉を放ってコンマ何秒かで後悔が襲ってきました。
I love youとI you loveなんて普段は言い間違える訳がないと思っていたのに、これだけ綿密に積み上げたシチュエーションの一番大事なシーンで大失敗したからです。
でも、彼女はちょっと照れくさそうにして、そんな君の手を繋いでくれました。
言い間違えを恐れてはいけません。言葉は所詮は伝えるためのツールなのです。
航空管制官の指示にも定められた用語が無数にあって、緊張感の中ずっと先の予測をしながら何を言おうか言葉を選んでいます。それでも、とにもかくにも
大事なことは相手に伝わる、ということです。
皆さん、日常生活でもいつも相手の気持ちに立って伝わるコミュニケーションを心がけましょう。
ではでは。
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