飛行場の管制塔で働く管制官は、勤務中の大半を外を見て過ごします。そこは一般のオフィスにある光景とは違い、管制卓と呼ばれる様々な種類の通信機器、電子機器、スイッチ類、ちょっとした物を入れておける引き出しが備わった机に向かい、ヘッドセットを装着して指示を出しています。
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たまには飛行機がいない時もあります。
もちろん飛行機がいなくてもやることはあるのですが、時間があるときには空を眺めてどれだけ遠くまで見渡せるか、雲の進む速さ、飛行機が出発してから雲の中に隠れるまでの高さ、といったポイントを常日頃チェックしています。この習慣が抜けなくて私生活でも毎日のように空を眺めては雲の形を気にしてしまうのは、航空系によくある職業病かも知れません。
雲の種類は大別すると2種類
■ 積もる系→これを積雲と呼びます。
■ 層状系→これを層雲と呼びます。
雲という物質はまとまって重なって垂直方向に伸びる(積もる)か、空を覆うように水平方向に伸びる(層状)か、大抵はこのどっちかです。
これが積雲; cumulusです。
この略はCuでキュゥムラスと発音します。
ぽっかり浮かぶ雲のことです。
この雲が積もってどんどん膨らむとこうなります。
もう、あんな雲が見えるなら真下辺りはこんな天気になってます。
積雲は単体では大したエネルギーではありませんが、集まって膨らむと次第に雷を伴って短時間に大量の雨をもたらす積乱雲に成長し、天気に悪影響を及ぼします。夏の豪雨はまさにこれです。
このような雲を積乱雲; cumulonimbus(Cb)と言いますが、通信読みだと「チャーリー(C)ブラボー(B)」です。
次にこれが層雲; stratusです。
略称はStでストレイタスと発音します。
うっすらと太陽が見えていることから、雲の層がまだ薄いことがわかります。
結局、雨っていうのは雲が一定以上体積を増して飽和状態を超えた時に、気圧のバランスを崩しながら水蒸気が粒となって吐き出した結果なんです。
なので、太陽が見えてても油断は禁物です。層雲も膨らんで厚みを増せばこんな風になります。
で、結局は
こんな風に空を覆って雨を降らせます。
この雲を乱層雲; nimbo-stratus(Ns)と呼び、瞬間の乱れ度は積乱雲ほどではありませんが乱層雲の場合は広く空を覆うため大抵は長雨で、降水の強度を微妙に変えつつじわじわ乱されます。
積もる系のトップ積乱雲と層状のトップ乱層雲
昔、航空管制官の先輩にこう言われました。
乱層雲を縦にしたのが積乱雲。だから積乱雲の豪雨は、乱層雲が地域一体に時間かけて降らせる雨全部を一度にそこに降らしているのと変わらない。
これが理解できればバッチリです。あとは外を眺めて実際にその雲を見つけてみてください。
最後に余談ですが、トップ画像の雲は彩雲と呼ばれています。日中、仕事をしていたら普通は空など見る余裕はないでしょうから気が付きにくい現象ですが、実はこれ結構な頻度でしかも時々とても美しい彩雲に出会えることがあります。
トップ画像のように綺麗な彩雲を肉眼で見る機会がなくなってしまったのは、今頃になって少し残念な気がします。
気がついたら哀愁に浸る2分間となってしまいました。
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