航空無線

航空無線を実例で学ぶ集中講座2

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人のふり見て我がふり直せ、を航空バージョンに置き換えて人の無線で美味しく学ぶ企画の第二弾です。英語字幕とアニメーション映像が付いていてとても分かりやすい動画に一言解説を付けています。航空管制官もパイロットも平常時は皆冷静ですが、危ない目にあえば感情的にもなります。

 

目次

VFRは管制間隔の設定対象ではない

2016/7/3

2機のVFR(有視界飛行方式)が交差時に接近するのだが、この空域では東に進むなら高度2000ft、西に進むなら1500ftを維持するように空域マップで示されている。通常、VFRに高度制限はないので、不勉強なパイロットは不慣れな空域でも何とかなるだろうと考えがち。結果見事に急接近して交差したため、無線交信の最後に「チャート持っとけ!」と当たられかけたパイロットの方から文句を言われる。

VFRというのは、天気が良い日にパイロット自身が目視で外が見えて(有視界)、管制官に安全を取ってもらわなくても自分で避けられるという前提で飛行する方法です。夜景を見る遊覧のヘリコプターなんかはVFRです。一般的に空の旅行で利用するような旅客機はIFR(計器飛行方式)で飛行しています。これは、パイロットが航空無線を常時モニターして、指示を仰ぎながら航空管制官に安全を取らせる飛行方法なので、ある意味パイロットに自由はない飛行方式です。IFRは、計器を見るだけで安全を確保できるという保証のもと、天候に左右されず視界不良な日でも運航が許可されます。

VFRのパイロットから、管制官なんだから制限高度くらい覚えておいてよ、って言われていますが、「パイロットは運航の最高責任者である」との自覚はありますか、と逆に聞きたくなります。

 

アムステルダム国際空港の管制を変えた一件

2016/2/28

KLM航空18Y便(KLM18Y)は、アムステルダム国際空港を目的地とするオランダの国内便で、機種はエンブラエル190(E190)という小型の旅客機。タワーの航空管制官は着陸許可を発出したが、その後、滑走路を横断しているトーイングトラクターに気がつき着陸復行を指示される。

この無線を聞いている限り、本来あるべき滑走路を横断するという指示の音声、トーイングトラクターの運転手が復唱する音声が入っていない。つまり、滑走路というタワーの管轄で安全を守らなければならないところで、地上管制席の管制官が横断を許可しているのが常態化していたのだろう。

この一件はオランダで重大インシデントに認定されたため、対応策として現在はタワーの管制官に全て通信移管を行うルールが出来たそう。管制塔内ですぐ隣にいるのに、タワーに確認しないで(誤解したまま理解して)地上管制席が外を見たまま判断して横断させる。油断の落とし穴です。

 

トリムトラブルのアメリカン航空

2016/5/2

アメリカン航空1027便(AAL1027)は、シカゴオヘア空港(KORD)からオーランド空港(KMCO)に向かう国内定期便で、機種はマクドネル・ダグラス(MD83)。オーランド空港の18R滑走路に降りる直前、フライトコントロールマルファンクション(故障)を通報。

トリムトラブルは、フライトコントロールプロブレム、の一種です。飛行を安定させる部品やシステム(フラップ、スラット、スポイラー、エルロン、トリム、エレベーター、ラダー等々)に不具合が発生することはよくあります。

(6) トリム(trim)
飛行機がある高度,速度,フラップ角およびエンジン出力などの諸条件のもとで飛行している場合,操縦翼面に働く空気力を調整し,前後,左右,上下の3軸に関して重心まわりのモーメントをゼロにすると,パイロットは操縦桿やラダー・ペダルなどの操縦装置に力を加えることなく,そのままの状態で飛行を続けることができる。このように,飛行機に作用する空気力,エンジン出力などをすべて釣り合わせ,操縦力をゼロにすることを「トリムをとる」という。
トリムをとるには,操縦翼面に取り付けられたトリム・タブという小翼を微調整する従来方式のほか,大型ジェット機のように,油圧や電気などの動力により操縦翼面自体の中立位置を調整することでトリムをとる方式もある。

引用: JAL航空実用辞典

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