航空管制官は管制塔から空港を支える縁の下の力持ち、のように書き続けてきたブログですが、全国で2000人近くいる管制官の全員が空港に勤務している訳ではありません。航空保安大学校を卒業した最初の赴任先で、窓の外を見ながら飛行機に指示をする管制塔の航空管制官になれるのは、各管署の要員状況にもよりますが半数くらいでしょう。
今日は管制塔以外で担当する仕事の概要と、管制席についてまとめてみました。
目次
ターミナル管制所(アプローチ)
離陸したあとに引き続く上昇と、空港周辺の上空から入域して到着する航空機を誘導するレーダー管制業務を担当する場所。管制官がいる空港で、かつ交通量がある程度多い空港に設置されている。無線交信では出発機を担当する管制席を出域管制席(ディパーチャー)、到着機を担当する管制席を入域管制席(アプローチ)と言い分けて呼ぶ。ディパーチャーは後述するACCに、アプローチはタワーに、それぞれ航空機をコンタクトさせるまでを担当する。パイロットと交信するそれぞれの管制官に補佐役として、航空交通管制部や管制塔と調整したり情報の共有をする副管制席も重要な役割を担う。
航空交通管制部(ACC)
航空交通管制部は、航空路監視レーダー(ARSR)を使ってエンルートの安全を管理するところ。札幌管制部、東京管制部、福岡管制部、那覇管制部と全国に4箇所あるが、東京管制部とは名ばかりで埼玉県の航空公園にある。よくある学校の体育館くらいの広い部屋に、レーダーモニターをずらりと並べて、日本上空を区分けしたセクター毎に航空路管制業務を行う。セクターを通過する巡行機を主に取り扱うが、ターミナル管制所がない空港へは着陸に向けた進入許可も発出する。
別の正式名を管制区管制所、英語で略してACC(Area Control Center)、無線上の呼び出し符号はコントロール。一昔前に放送されていた東京管制部を舞台にしたドラマ「東京コントロール」は、まさに無線で使うコールサインそのまま。
航空交通管理センター(ATMC)
福岡管制部に隣接する航空交通管理センターは、アルファベット4文字でATMC(Air traffic management center)です。ここにいる管制官は無線交信を直接パイロットとすることはありません。航空路監視レーダーが届かない、太平洋上にいる航空機の管制(洋上管制)を担当していますが、パイロットへの伝達は運航情報官が中継しデータリンクまたは短波HF(High frequency)周波数で行います。
※通常の航空無線周波数は超短波VHF(Very high frequency)を使用
ATMCが担当する主な業務は、日本の空域全体またはセクター毎、空港単位での交通量を制御すること。リアルタイムに交通状況を把握して、目的地の空港に混雑が予想されると(無駄な空中待機が増加するのを抑えるために)出発前に空港で待機させたり、到着機に速度制限を付ける判断を下します。
また、米軍、自衛隊と空域使用に関わる調整もATMCの担当です。
管制官は現場で無線だけ、では済まない
管制官は現場だけで成り立つ仕事ではありません。一般企業と同様の人事や職員管理、増大する航空機への対応、新技術の導入、様々なトラブルや不具合の状況説明も管制官にしか出来ないことです。
国土交通省、航空局、航空保安大学校、SDECC(システム開発評価・危機管理センター)、他にも現場以外で働くたくさんの管制官により、航空管制の組織は支えられています。
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