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航空管制官試験の難易度は?倍率を8年分検証すると意外な結果が!

成田空港渋滞

航空管制官採用試験の倍率や難易度を徹底的に分析しました。申込者数のうち受験者数は何人いて、実質倍率はどれくらいなのか。人事院、国土交通省が発表する試験結果や採用状況を見ると、倍率の高さから難易度が分かりますが、受験者が知りたいのは記念受験ではなく本気で航空管制官になりたいと思って試験対策をしている人数、つまり強敵なライバルになる受験者数の中で何人が合格するのか、だと思います。

今回は航空管制官採用試験の8年分の統計を元に受験者数、合格者数、合格率、倍率の推移を整理・分析しました。まずは申込者数から実際に受験をした人数を割り出す方法と実質倍率の求め方から解説します。

国家公務員試験の申込者数のうち受験者数は74%

人事院、国交省が発表している過去の採用試験結果は申込者数、1次合格者数、2次合格者数、最終合格者数、採用者数となっています。実質倍率を求めて本当の難易度を知るには、受験申込者数ではなくて実際に受験した人数が必要ですが、航空管制官採用試験はその人数が示されていません。国家公務員試験は申し込めば無料で受験できますので、とりあえず申し込みだけでもしておこう、という考えの人が相当数いると思われますが、そういった不届き者達を排除して、本気で航空管制官になりたくて必死に勉強してきた受験者の数だけを抽出するにはどうすればいいか考えました。

調べてみると、国家総合職(昔の国家一種)の試験結果には、申込者数だけではなく受験者数の統計が示されていました。国家総合職と航空管制官の国家公務員試験を受ける人の心理をデータで比較することは出来ませんが、このデータを使って本当の難易度、実質倍率を求めてみたいと思います。

まずは、国家総合職の統計から、申込者数のうちどれくらいの割合で実際に受験したか、を計算します。

【平成29年度 国家総合職「院卒者」試験】

試験の区分

申込者数

受験者数

受験率

行政

606

453

0.75

人間科学

138

116

0.84

工学

658

473

0.72

数理科学、物理、地球科学

247

195

0.79

化学、生物、薬学

457

329

0.72

農業科学、水産

196

163

0.83

農業農村、工学

29

25

0.86

森林、自然環境

139

126

0.91

【平成29年度 国家総合職「大卒程度」試験】

試験の区分

申込者数

受験者数

受験率

政治、国際

1,391

995

0.72

法律

10,216

8,576

0.84

経済

2,069

1,641

0.79

人間科学

454

350

0.77

工学

1,912

1,454

0.76

数理科学、物理、地球科学

286

223

0.78

化学、生物、薬学

648

512

0.79

農業科学、水産

526

452

0.86

農業農村、工学

275

246

0.89

森林、自然環境

344

289

0.84

※受験率は、受験者数÷申込者数で算出しました。

ソース: 公務員試験合格ガイド

同様に平成24年度〜平成28年度の全期間、全試験の平均受験率を求めると、74%になることが分かりました。次にこの結果を使って航空管制官採用試験の難易度、実質倍率を探ってみます。

今年の採用試験の実質倍率は約5倍と想定される

航空管制官採用試験の募集案内、リーフレットは平成25年度版まで見ることができます。→http://www.mlit.go.jp/koku/

そこに記載されている8年分の統計から、倍率の推移を整理しました。申込者数は年々減少していますが、採用人数は年々増加していますが、航空需要の高まりから今後も航空管制官のニーズは高まると思われますので、しばらくはこの傾向が続くと思われます。男子諸君にとって喜ばしいことに、受験者、合格者の女性比率は毎年高まる傾向にあります。なお、H26年度までは2次試験までしか行われていなかったので、3次試験のデータが出ているのはH27年度以降になっています。航空管制官の採用試験は超難関というイメージがあると思いますが、実際のデータをご覧頂きたいとおもいます。

航空管制官採用試験8年間の推移

年度

H29

H28

H27

H26

H25

H24

H23

H22

増減率

申込者数

1045

1005

1077

1315

1436

1275

1609

1708

-6.8%

受験率(想定)

0.74

0.74

0.74

0.74

0.74

0.74

0.74

0.74

受験者数(想定)

773

744

797

973

1063

944

1191

1264

1次試験合格者数

307

290

335

318

259

199

215

194

+6.8%

1次合格倍率

3.40

3.47

3.21

4.14

5.54

6.41

7.48

8.80

-12.7%

実質倍率

2.52

2.56

2.38

3.06

4.10

4.74

5.54

6.52

2次試験合格者数

163

166

120

+16.5%

2次合格倍率

6.41

6.05

8.98

-15.5%

実質倍率

4.74

4.48

6.64

3次試験合格者数

138

141

102

97

87

70

76

63

+11.9%

最終合格倍率

7.57

7.13

10.56

13.56

16.51

18.21

21.17

27.11

-16.7%

実質倍率

5.60

5.27

7.81

10.03

12.21

13.48

15.67

20.06

ソース: 国土交通省

H29年度の実質倍率は5.6倍という結果になりました。近年の受験者にとっては嬉しいニュースかもしれませんが、当時の超難関をくぐり抜けた者としては、8年間でここまで急激に落ち込んでいるのを見て将来を危惧してしまいます。しかし、女性の志望者が増加傾向にあるという光明は、航空管制官という仕事が持つ魅力と国家公務員のワークライフバランス、産休・育休制度の良さなどの働き易さの結果だと思います。

国には、その長所を活かして航空管制官の魅力発信に努めて頂きたいものです。

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3 Comments

  • Reply
    U
    2018年8月30日 at 9:45 PM

    こんばんは。初めてコメントいたします。

    2016年頃、頻繁にブログ更新されていたときから拝読していて、今日、出遅れましたが、再開されているのを見つけました。

    当時、私は航空ファンになったばかりだったのですが、このブログのおかげで、今では航空ファンというより管制ファンになり、飛行機を見かけたらFlightrader24でルートを確認し、台風が来たら(台風以外のときでも)気象レーダーで雨風を見つつ羽田空港のLiveATCnetを聴いたりします。
    このブログに出会うのがもう少し早ければ、本当に管制官を目指してたかもしれません(笑)

    長々と書いてしまいましたが、また戻ってきてくださって嬉しいです。
    これからも楽しみにしています!

  • Reply
    てっちりん
    2018年9月1日 at 8:54 PM

    >Uさん
    こんばんは、初めまして。
    マイペース更新のブログですが、お読み頂きありがとうございます。
    飛行機の運航は、管制だけでなく多くの人たちによって支えられていて、
    その恩恵を私たちは享受できていることを伝えていきたいと思います。

  • Reply
    BOSE
    2021年2月16日 at 10:29 AM

    管制官の受験率は公表されており、管制官は公務員試験の中でも受験辞退率が飛びぬけて多く50%程度です。だから実質倍率は更に下がります。

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