飛行機に乗り込んでチケットに書かれた座席を探したら、あとは上の棚に荷物を入れてシートベルトを締めれば出発までホッと一息。窓の外や機内の雑誌を見ながら旅行気分を抑えてリラックスしてる合間にも、パイロットは管制承認伝達席(クリアランスデリバリー)の周波数で交信をして、管制官に管制承認を要求しています。
航空機は事前にフライトプラン(飛行計画書)を提出しています。出発予定時刻の一定時間前になると運航情報官から配信されるシステムに乗って、現場の航空管制官に航空機の情報がストリップ紙に印字された形で届けられます。
このストリップはグラフィックソフトを使って作りました。飛行計画書と管制承認について説明するサンプルになるものを探していましたが、自作でトライしました。細かいことを言うと印字内容や文字のフォントに違いはありますが、今日の説明には十分です。このフライト情報が実在するかどうか調べておりませんが、飛行情報についてはWikipediaの航空交通管制を参考にしました。
後ほど交信例で引用します。
目次
管制承認伝達席の管制官は、
このストリップに書かれた最小限の飛行情報を確認しながら管制承認をパイロットに発出する担当席です。ではなぜ、管制承認発出席ではなく管制承認伝達席と言われるのかというと、管制承認はパイロットと交信を直接するデリバリー席が自分で判断できる内容ではなく、上空のエンルート(航空路)管制を担う航空交通管制部の管制官が交通量や天候等を考慮して、出発時間になった航空機の飛行を改めて承認する性質のものだからです。
飛行計画書で提出した高度と飛行ルートがそのまま承認されるかどうかは、航空路を担当する管制席に委ねられます。飛行場にいるクリアランスデリバリーは、パイロットとの間の中継役に過ぎません。パイロットが航空交通管制部と直で交信することができれば中継は不要に思えますが、飛行場には飛行場の、エンルートにはエンルートのそれぞれ事情があって、臨機応変に対応する必要があるので現状はそうなっていません。
管制承認を伝達するときに使う英語はとても長い
先ほどお見せしたストリップはプリンターから出てきたばかりのほやほやです。パイロットから飛行計画書と違う高度を要求されて、航空交通管制部からその高度で承認を受け取り、パイロットに管制承認を伝える頃にはこれくらい文字が書かれているはずです。
JALのコールサインはジャパンエアーなので、便名の読み方はジャパンエアーファイブゼロワン。B777はボーイング777型機が当航空機の機材であることを示します。便名の右に書かれた2146はスクォークコードと呼ばれる、コックピットで出発前に設定しておかなければならない割り当てコード番号のこと、RJCCは空港4レターコードで新千歳空港(ニューチトセ)を表します。PLUTO1 NZE Y11というのは大まかな飛行経路とFIXのこと、手書きで書かれたM150はMaintain 15000 feet、EXP370はExpect 37000 feetを略したものです。
このストリップの情報を元に管制承認をパイロットへ伝達するときの交信例は下記。
交信例 Japan Air 501, Cleared to New Chitose Airport via Pluto 1 departure then flight planned route, maintain Flight level 150, expect flight level 370. Squawk 2146.
日本航空501便、新千歳空港への飛行を承認します。経路はプルート1出発方式、その後は飛行計画経路通りに飛行してください。離陸後は高度15,000フィートを維持、最終承認高度はフライト・レベル370(37,000フィート)の予定。トランスポンダーのコードは2146です。
引用元; Wikipedia航空交通管制
この用語の一字一句が管制承認となります。この呪文のような長い文章をストリップの印字内容だけを見て伝えられるようになるのが、最初はとても難しいんです。
Japan Air 501, Cleared to New Chitose Airport via Pluto 1 departure,then flight planned route, maintain Flight level 150, expect flight level 370. Squawk 2146.
※thenは管制方式基準に書かれていません。
(ジャパンエアーファイブゼロワン、クリアートゥーニューチトセエアポート、ビア(バイア)プルートワンディパーチャー、フライトプランドルート、メインテインフライトレベルワンファイブゼロ、イクスペクトフライトレベルスリーセブンゼロ、スクォークトゥーワンフォーシックス)
赤字にしたのは定型で変わらない単語です。カタカナ読みについては、書くだけで嫌になるほど長い!
クリアランスデリバリーが混雑しているときは、この呪文を無線で唱えまくりです。管制官が言ったあとはパイロットも復唱しなければならないので、無線がこの言葉だらけになる時間帯も少なくありません。今はデータリンクを利用して交信自体は減ったと聞きますが、クリアランスデリバリーの負担は自動化しても変わりません。正確に物事を伝達するということは、それだけ難しいんです。
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