航空無線で使用が義務付けられているアルファベット通話表は国際民間航空条約(シカゴ条約)に基づくものですが、そもそもは無線電話で通話する際にアルファベットの綴りを発音によらずとも誤解なく確実に伝えること、を目的としてアルファベット通話表は考案され、各業界で使用しやすい単語に派生しながらスタンダード化されて今の形となりました。
目次
通話する管制官を識別するお好みイニシャル
航空保安大学校に入学すると早い段階で、イニシャルを決めるよう担当教官から言われます。イニシャルとは通常、名前の頭文字を取ったアルファベット2文字のことを表しますが、航空管制官のイニシャルというのは本名と全く関係ありません。自分の好みで選んでアルファベットを2文字組み合わせてオッケーです。それこそ本名のままでもいいですし、オッケーにちなんでOKがいいなら、無線電話上の名前はオスカーキロです。
文字 |
単語 |
発音 |
文字 |
単語 |
発音 |
A B C D E F G H I J K L M |
Alfa Bravo Charlie Delta Echo Foxtrot Golf Hotel India Juliett Kilo Lima Mike |
ALFAH BRAHVOH CHARLEE DELLTAH ECKOH FOKSTROT GOLF HOHTELL INDEEAH JEWLEEETT KEYLOH LEEMAH MIKE |
N O P Q R S T U V W X Y Z |
November Oscar Papa Quebec Romeo Sierra Tango Uniform Victor Whisky X-ray Yan kee Zulu |
NOVEMBER OSSCAH PAHPAH KEHBECK ROWMEOH SEEAIRRAH TANGGO YOUNEEFORM VIKTAH WISSKEY ECKSRAY YANGKEY ZOOLOO |
※黄色の母音はアクセントを示す。(スマートフォンでご覧の方は画面を横向きにしてください。)
上の表を見ていて印象的なのはRとJ、ロミオとジュリエットでしょう。ですが航空管制官として使用するイニシャルをRJとするのはオススメしません。一度決定したイニシャルは事務手続きを通さなければ変更出来ませんし、これまた結構な頻度でその言葉を喋ることになるので、「ロミオジュリエット」は発音が長くてだんだん面倒になってきそうだからです。
お主、無線電話では名を名乗れ!最後にね。
航空管制官がパイロットに指示する声は常時録音されています。正確にはその周波数上の交信全てが録音の対象です。それと同様に他官署の管制官や他の組織と無線電話で通話した声も録音されており、音声テープを聞き返した際に誰が通話したのかを正確に把握するため、いつも通話の最後にはお互いのイニシャルを名乗りあって電話を切ることとなってます。なのでトラブルや事故等で調査が入れば、責任の所在はあっという間に明確となるわけです。
僕はとりわけ好きな単語もなく、本名通りのイニシャルでも官署の誰とも重ならなかったので、TM(タンゴーマイク)をずっと使っていました。
今まで聞いた中で一番微笑ましかった名前はRP(ロミオパパ)です。ロミオパパさん本人に由来を訪ねたところ、お子さんの名前をとってR、RのパパだからRPにしているとおっしゃっていました。
仕事場に居ながら家族のことを思う素敵なお父さんらしい発想です。
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