管制塔

強風の日にやってくるもの-A windy day-

タイの夕日

現役時代に書いていた管制官のブログより、再アップ編集版をお届けします。

「珍事件集」

投稿:2011/01/08

明けましておめでとうございます。今回は風が強い日のちょっとした出来事を2つご紹介します。

一つ目はお互い英語を母国語としない僕とパイロットの間に起きた話から。

地上走行中の飛行機から呼込みがきました。ただ直進するだけの誘導路だったので、特に指示や交通情報を必要とするシーンではありません。

パイロット:There are white pee… on the glass.「芝生の上に白いピー…がある」

声を聞くからに、母国語の発音にだいぶ引っ張られた英語の発音をする外国人パイロットでした。pee…が何だか聞き取れなかったのでこちらから聞き返します。

管制官:Could you say again? What are there in front of you?「もう一度言ってもらえますか?何が前にあるんですか」

すると、

パイロット:Pee***!! White peo***!!

注意深く聞きましたが、ホワイトピーパー??としか聞こえなかったので、思わず

管制官:Do you mean “white people”?

と、聞き返すとまた「ノー!ピーパー!ピーパー!」と返答がきました。

この交信を聞いていた隣の管制官は、そんなとこで白人が芝生を歩いてるわけないだろ!?と、笑いころげる始末。

管制塔から双眼鏡を使って当該機の周辺を見ましたが、それでも何も見えませんでした。すると今度は、

パイロット:It’s O.K. ピーパー is not there now.「もう大丈夫。ピーパーはもうなくなった」

この時、ようやく彼が伝えたかったものの正体に気が付きました。それは、Paper…つまり紙だったのです。おそらく風が強かったので、どこからか用紙か何かが風に運ばれて誘導路脇の緑地帯に落ちていたのでしょう。冷静に考えれば今日の天候や発音の推測から分かりそうなものでもあるし、パイロットもIt’s a piece of paperなどと言い換えれば伝わりやすかったと思うのですが、管制官はたくさんの飛行機へ指示しながら、またパイロットも操縦や安全確認をしながら交信をしているため、時々こういう勘違いを産むとミスコミュニケーションが連鎖してしまいがちです。

二つ目の出来事です。今度は違うものが強風でやってきました。

地上走行中のパイロットから、私が指示した誘導路は通りたくないと言われました。なぜか理由は言ってきませんでしたが、言われた通り、迂回する別のルートを指示し直しました。

後続の飛行機は、指示した通りにその誘導路を通過したのですが、なんだか妙に減速して走行しているように見えました。

そしてその次の航空機にも同じ誘導路を指示したとき、なぜ最初のパイロットがその誘導路を通りたくないと言ってきたのか、その理由が判明しました。

パイロット:A ladder is too close. Please remove it.「ハシゴが近すぎる。除去してください。」

何でハシゴなんか落ちてるのか分からないですが、パイロットに除去するよう要求があったので、地上面を点検する車両に出動を依頼して、その周辺に何か落ちていないか調べてもらいました。

管制塔から、点検車両を双眼鏡で追いかけると、管制塔からやや死角となる場所で停まりました。注意深く見てみると、確かにラダーに相当するものがあったのです。

想像していたハシゴとは違い、小学校の校庭に置いてあるようなキャスターが付いた移動式のバスケットゴールに似た手押しで使うタラップでした。飛行機の外装を点検するために使われる機材です。

確かに英語で表現するならラダーですが、ハシゴと言えば立て掛けて使う一般のハシゴを思い浮かべていた私には気が付くはずもありません。おそらくこれもまた強風により、どこかの整備場から誘導路近くまで運ばれてきたのでしょう。

点検車両から人が出てきて、それこそバスケットゴールを動かす小学生のようにキャスターの足を掴んで、えっほえっほと取り除いてくれました。

些細な出来事ではありましたが、風が強い日は何が飛んでくるか分からないなぁ。

あなたにおすすめの関連記事

0 コメント

    コメントする