航空管制官

海外で管制官になるには?外国の給与、条件を徹底比較

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「航空管制官って英語で仕事してるんだったら、海外でやればいいのに。そのほうが給料も高いし。」と、何度か言われたことがあります。イメージ先行ですが、海外なら風通しの良い職場環境で待遇も良く、充実した生活を過ごせそうです。が、英語を話せるから海外でもやれる、というのはちょっと短絡的な考えです。

日本では国家公務員の規定により、日本国籍を有する者でなければ航空管制官にはなれません。しかし、国籍の条件が無かったとしても、パイロット以外でトーイング車両、滑走路点検車両、消防車両の運転手と交信するときや、管制官同士、管制官以外の空港会社やエアラインと専用電話で調整するときは日本語を使うので、やはりネイティブ並みの語学力を身につけなければ管制業務は出来ません。

それは海外でも同じことなので、海外で航空管制官になりたければ、まず日本で航空管制官として経験を積み、さらに現地で生活しながら問題なくコミュニケーションが取れるレベルに到達して、就労ビザや居住権などの条件面もクリヤーしなければなりません。

日本人が海外で航空管制をするだけで、とても希少な人材になることは間違いありません。そこで、本当に求人はあるのかどうか、英語を母国語とする国々を中心に給与、待遇、雇用条件などを調べてみました。

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アメリカの航空管制官→×

アメリカの航空管制はFAAという政府関連組織により提供されています。そのため、見た限りの求人情報には、「アメリカ市民であること」の条件が書かれていました。給料は平均で年収約1400万円と書かれていますが、ロケーションによって変わるということなので、シカゴ、アトランタ、ニューヨークなどの主要空港では年収2000万円近い管制官もいるでしょう。

イギリスの航空管制官→〇

イギリスではNATSという民営化した会社が航空交通サービスを提供しており、イギリス人でなくとも就労が可能と書かれています。求人のページからいきなり2段階のオンラインテストを受けさせられ、その後に評価センターというところでさらに2段階の試験が課されます。評価センターでは、1次試験でいきなり今までに得た航空交通業務に関する知識のテストがあり、2次試験では適性を測る面接、人格の面接、コンピューターを用いた「マルチパス」と呼ばれるテストがあります。

採用後は訓練が始まりますが、その時点での年収が500~570万円、航空管制官として働くと年収は1440万円程になると公式ホームページに書かれています。インド人らしき男性管制官の写真を出しているあたり、外国人の雇用も意図している印象です。

ヨーロッパの航空管制官→×

ヨーロッパはEUROCONTROLが主に航空管制業務を実施しています。求職者向けのホームページに冒頭から、「航空についての情熱と空間スキルを持っているなら、航空管制官としての訓練に参加できる」とか「オランダのコントロールセンターで多国籍航空管制官チームに参加する人を募集する」と書かれています。毎年2月から10月にかけて訓練期間を設けており、その訓練に適した候補者を選考する手続きが進行中で、参加には25歳未満という制限があります。中途採用については調べていません。

必須要件としては、

  • 訓練開始時に25歳未満
  • 健康である
  • 英語力がある
  • ユーロコントロール加盟国の国民である

って、え?多国籍とか言っていましたが、結局のところそれは欧州の各国という意味でした。

給与については、母国で働くその国の国民なら月収で42万~48万5千円、母国以外で働く移住者は月収で49万~58万円、24時間シフト勤務者は追加で19万5千円ということなので、年収の最高額を計算すると930万円になります。欧州は社会保障が充実しているため、給料は平均で見ても低いのですが、航空管制官は平均所得の2~3倍貰っていることになります。

カナダの航空管制官→△

カナダの管制官は民間のNAVCANADAに所属しています。経験者募集の求人(indeed)を見ましたが国籍の縛りはありません。求められる条件は、航空管制の仕組み、方式、関連知識などの国際基準に加え、カナダの航空規則、NAVCANADAの組織、責任、優先順位に関する知識を持っていること、とのことです。

あると望ましい能力としては、

  • 口頭または文章による円滑なコミュニケーション能力
  • 新しい方式やシステムに柔軟に対応する能力
  • プレッシャーの下で働く能力
  • 問題を分析し解決策を導く能力
  • 方針を示されなくても自身で動ける能力

が挙げられています。言語の要求条件として、

  • バイリンガルであること

と書かれており、カナダなので英語とフランス語という意味だと思います。日本人には高いハードルです。なお、給料は年収で774~923万円と書かれています。

空港、雪

シンガポールの航空管制官→×

「空は君の手に」なんて、何かの映画かドラマのタイトルのようなキャッチコピーから求人ページは始まりますが、シンガポール人でないと管制官にはなれません。シンガポールの管制官は、日本と同様にCAA(民間航空管理局)という国の組織(日本はCAB)なので、外国人はお断りです。給料についても確かなものは見つかりませんでした。

オーストラリアの航空管制官→×

オーストラリアは、空軍が管轄の空港で民間機と軍用機を管理する航空管制官の求人が出ていました。応募要件はオーストラリア市民であること、17歳以上であることだそうです。待遇はとても良く、医療が無料、スポーツ施設も無料の上、年収は800万円。退職金も出ます。羨ましいですね。

ニュージーランドの航空管制官→〇

ニュージーランドでは、航空管制サービスを提供する唯一の組織「AIRWAYS」が管制官を雇用しています。現在、ニュージーランドの北方面の島にあるPalmerston(パーマストン)空港で働く管制官経験者を募集しています。応募要件は、

  • 飛行場管制の免許
  • 管制官としての実績
  • 仕事、チーム、組織に対する仕事倫理と積極的な姿勢
  • 優れた対人関係、チームの構築が出来る
  • AIRWAYSの組織を反映できる

とのことです。具体的な給与は公表されていませんが、Competitive salary「競争的な給料(他社に比べて多く出しますよ)」という表現がありました。

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ドバイ(アラブ、中東)の航空管制官→〇

さすが世界の産油国だけあって、給料はExcellentの管制官経験者募集ページがありました。内容を読むと、勤務地はドバイのレーダー施設と読み取れます。求職者に対する必須要件は、

  • 5年以上の進入管制(アプローチレーダー)経験
  • 主要国際空港で3年以上の資格保持
  • ICAOレベル5以上の英語能力
  • 航空管制官としての身体検査適合

となっており、加えて、

  • 中東での多文化環境における経験

もあると更に良いということです。日本の航空管制官はICAOレベル4の英語能力証明があれば良いのですが、レベル5はネイティブレベルに相当します。レベル4は3年間しか有効期限がありませんが、レベル5を取得すると6年間英語能力が保証されます。

英語とアプローチレーダーの能力に自信がある管制官経験者は、高い給料を求めてアラブに移住することも考えてみては?

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