エアライン

運航の最高責任者はパイロット

ノンレーダー

昨日は天候不良で管制塔から滑走路が見えなくても、航空無線さえ使わせてくれれば口と耳だけで安全を守れるというお話をしました。天気が悪いとはいえ、空港に到着するため滑走路へ向かって直線降下する航空機が対象なので、航空管制官が状況を誤って判断ミスをしても、到着しようとするパイロットが危険を感じたら着陸やり直しをすれば済む話です。

 

管制官の判断ミスでゴーアラウンド、という重大なことを軽々しく言っているように聞こえますか?

いえいえ、滅相もございません。航空管制官は着陸を許可するのであって、指示するわけではありません。このまま着陸すればぶつかって事故を起こすようなときに、操縦士であるパイロットが身を捧げて強行するわけがありません。不謹慎なお話になるかもしれませんが、まだ管制官をしていた頃に飛行機と飛行機を自分自身の指示で衝突させることはできるか、という質問を受けたことがあるのですが声を大にしてお答えします。

 

Go-around-2_Jap

 

飛行機運航の最高責任者はパイロット。航空管制官の指示で航空機2機をぶつけるなんて到底できません。

航空局にそんなことを考える人はいませんが、分かりやすく説明するためにあえてこういう言い方をしています。飛行機の安全を支えるシステムは、人間であるが故に生じる個人のミス(ヒューマンエラー)をカバーするように様々な対策がとられています。

その代表とも言えるのがTCAS(ティーキャス)という飛行機に搭載された衝突回避システムです。

TCAS; Traffic alert and Collision Avoidance System
空中衝突防止装置

 

TCASは航空機の高度、速度、姿勢等のデータから他機との接近を察知して、衝突する恐れがあればコックピット内に警報と機械の声でClimb(上昇)またはDescend(降下)の指示を発出します。TCASは衝突前両機に対して最適な指示を出し、パイロットは回避を完了するまでその声に従います。回避指示は上昇または降下の垂直方向だけで、水平方向の回避(左旋回、右旋回)機能はまだありません。次世代の衝突防止システムTCASIIIは垂直、水平を加味した最適な回避措置を講じるようですが、まだまだ先のようです。

この指示がコックピットで発出されたら、航空管制官はすぐに引っ込みます。パイロットからTCASが発動したとの通報があったなら、もう出来ることはレーダー画面を眺めてターゲットが消失しないように祈るだけです。航空管制官とTCASの指示が相反する場合はTCASを優先することとなっていますので、それくらい安全性が高いシステムと言えます。

 

飛行機テクノロジーはここまで進化しています。

航空管制官が航空機同士をぶつけようと指示しても、この空中衝突防止装置が防ぎます。それどころかTCASの前にレーダー画面上で警告(CA; Conflict alert)が先に出ますので、ぶつけようとしても目立って隣の管制席にまずバレます。あえて管制官にそぐわない解説をしたのは、人為的にやってもできないくらいの仕組みであれば、ヒューマンエラーによるミスは十分防げると納得頂くためです。変な誤解はなきようお願いします。

 

今日覚えてほしいこと

  • 航空管制官は着陸を許可するのであり、指示できない。
    パイロットは危険を感じればいつでも着陸復行できる。
  • TCAS空中衝突防止装置が発出した指示は最優先。
    パイロットから衝突回避完了を聞くまで、管制官は何もできない。

航空管制官とは最高責任者であるパイロットの負担を軽減する補佐役です。

一緒に空を飛んでる気持ちになって、今日も地上で冷や冷やしながらお慕い申し上げます。

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