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格安LCC航空会社のパイロットが見せた格上の神業

格安航空会社の異常に見える安売りシステムは、日本にすっかり定着しました。LCCは一過性のブームではなく、飛行機に乗って遠くへ行くことを身近に変えた立役者となっています。どこ行くのか考えなくても格安航空会社がキャンペーンをするとなれば、時期を合わせてそこに行ってみるという目的と手段の逆転現象すら起きています。

 

LCCが低料金を維持できるのはなぜか。

格安航空会社が低料金システムを維持できる理由を挙げればキリがありませんが、JALやANAが企業努力をしていないというわけでは全くなく、そもそもフライト欠航時の対応(保障)が違います。詳しく説明しませんが、LCCはギリギリまで経費を抑えてサービスを自動化、簡素化し、職員一人一人が多くの役割を兼任することで低料金を実現しています。

それからもう一つ、レガシーの航空会社とLCCで運航に大きな違いがあります。

今日は、その違い故に起きた格安航空会社らしい一面を感じるお話です。

 

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夜間の混雑ピーク帯が過ぎたあとの管制塔の運用室内は、

交信が少なくなり慌ただしさも消えて落ち着いた雰囲気です。緊迫感から解き放たれてリラックスしながらそこそこの交通量をこなせば、まもなく1日の仕事は終わりです。夜勤がある空港ならそのまま突入もありえますが、それでも管制官にとっては安心してパイロットと会話を楽しめる良い時間です。

 

とはいっても、ただじゃ仕事が終わらないのが航空管制

空港の滑走路運用時間が残り1時間を切った頃くらいに、エンルートの交通を管理する航空交通管制部からランドライン(専用電話)で最終便が遅れて出発空港をいま離陸した、との連絡が入りました。フライトプラン(飛行計画書)を調べてみると最終便はLCCの航空会社で、朝一番にここの空港を出発していった飛行機の帰り便でした。

こういうことはよく起こります。航空機は飛行距離にもよりますが、国内便であれば3〜4レグ(フライト)くらいを1日で飛行します。例えば、羽田空港→那覇空港→関西空港→羽田空港の4レグをこなすフライトがあったとして、那覇空港で大雨に遭って遅延が発生したとします。

するとその影響が尾を引いて、本来のスケジュール上は最終便でも何でもないような航空機が、滑走路閉鎖時間のギリギリに到着するようなことが起こるわけです。

 

地上のピーク帯が終わるのと同様に、夜間の空はそこまで混雑しているわけではないので、出発時間が遅れたとしても飛行中に航空交通管制部、ターミナルレーダーの管制官がなるべくショートカット出来るように誘導し、パイロットも普段より速度を上げながら到着空港に向かってくるので、予定時間を巻き返して数分早く着陸できる結果になることが多いのですが、その日はいつものようにうまくは行きませんでした。

 

空港の滑走路閉鎖時間5分前

になりました。まだそのLCC到着便は着陸していません。レーダー画面で現在地、高度、速度は確認できますが、どちらかというと間に合わない位置にレーダーターゲットがありました。5分後に接地するつもりなら、機首を滑走路方向へ向ける最後の旋回に入っているはずです。

 

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こうなると管制官も他人行儀でレーダー画面を眺めている場合ではなくなります。時間がシビアになればなるほど、タワーの管制官も追い詰められるのです。滑走路閉鎖時間を過ぎたのに航空機が到着したとなれば、管制官も何かしらの追求は受けることになります。

「なぜ、ゴーアラウンドの指示をしなかったのか。」

と、問われるのは仕方がないことです。

 

それは分かっていましたが、早朝から出発して5レグをこなして何とか帰ってきている飛行機に着陸やり直しを言って他の空港に回すのは、公的な責任を問われるのと質は違うけど同じ重さのように思えました。

 

当該機からコンタクトがきたので、とりあえず着陸許可を出しました。

あと出来ることはゴーアラウンドを言うか言わないか、それだけです。

 

空港の滑走路閉鎖時間まで30秒

もう肉眼ではっきり飛行機の大きさが分かります。間に合うはずのない位置にいた飛行機が、自分の判断を迷わせるほど遅れを挽回しただけでも驚くことです。あと0.5マイル(約900m)滑走路から遠ければ迷わずパイロットに引導を渡すゴーアラウンド、だったのですがまだ間に合うかどうか分かりません。

分かりませんでしたがもうこの頃には、

「ゴーアラウンドを言うタイミングを失うほど難しい判断だった。」

と、答えることに決めていました。

 

周りで見ていた管制官も内心は気が気じゃなかったと思います。着陸が間に合わないと分かっててなぜ助言をしなかったのか、なんて追求され兼ねませんから。

 

管制卓に設置された正確なデジタル時計の秒針と到着機の位置を何度も確認しました。

55、56、57、、、メインギヤのタイヤが接地したのは58と59の間でした。

分針が繰り上がる前、1秒早かったので何てことない最終便です。

それにしてもここまでギリギリだったとは。そりゃ5分前でも判断できないわけです。

 

時間の正確さについて、LCCのパイロットは侮れません。

出発空港を出る前の計画段階から、フライトを取り止める判断と戦っていたはず。

どことは言いませんが、誰が想像しても1時間では間に合わなそうな距離です。

キャビンも含めて飛行機に乗った全ての人が、同じ気持ちで飛んでいたと思います。

 

滑走路から離脱したあとの地上走行もLCCらしく素早く軽やかです。

その調子で明日はあと5分、早く帰ってきてください。

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