航空管制官

緊急飛行機の安全対応講座2

1306Z EMERGENCY = 13:06 緊急
*1306の後に付いてるZは、イギリスの標準時(日本より9時間遅い)に合わせて作った航空業界統一の世界標準時の記号。日本標準時はIエリアに属するので、1306Z = 2206Iつまり1306Zは日本時間の22:06。

MAYDAY MAYDAY MAYDAY =  メーデーはフランス語で助けに来て、を意味する遭難信号のこと。遭難信号の発信は、船舶や航空機等から切迫した状況に陥ったか重大な局面に差し掛かっているときに、無線による音声、特有の騒音音響、または機上の信号応答装置により発信される。

DESCENDING TO FL140 = FL14000フィートに降下中
*FLはフライトレベル(直訳: 飛行水平高度)と読み、気圧による高度差を標準大気で補正した高度を示す。日本では富士山の高さを考慮して、フライトレベル補正の設定をしなければならない高度の下限は14000フィートと決められている。

DIVERTING TO RJAA =成田国際空港にダイバート
*ダイバートとは悪天や緊急等の理由により、飛行計画書の目的空港以外の空港(通常は他に指定した代替空港)に着陸すること。成田空港を4レターコードで表すとRJAAとなる。羽田空港はRJTT。

 

緊急事態によりダイバート先の空港に着陸

そういう状態の飛行機を迎えてしまった管制官が、どうやって安全に対処すればよいかの説明第2弾です。機体の故障箇所によりケースは様々ですし、着陸時にそれがどんな影響を及ぼすのかは蓋を開けるまで分かりません。空港近くで空中待機するくらいなら平気、という程度のトラブルであれば燃料を使いきるために数時間の余裕がありますが、着陸重量オーバーでタイヤパンクするくらい覚悟しなければならないほど緊急な状況であれば、飛行機はものの10分くらいで滑走路に向けて進入を開始します。それまでに緊急機とは関係ない飛行機の交通流を整えて、

「こんな感じの緊急機が発生したせいで皆さんは遅延ですよ。」くらいは全体にアナウンスしておいて、無線が静かな状態で緊急機からの呼び込みを心穏やかに待ち受けたい。そのためにも緊急機の状況と遅延時間の説明は、自分の周波数帯にいるパイロット達へスムースに伝える必要があります。

 

P1000991

 

ここで、あなた(前列に座っている航空保安大生の左耳を指さして。)がパイロットとの通信をやりながらもう片方の耳で集めた情報が生きてくるんです。遅延時間を想定するために考えること、それは緊急機の着陸後に繰り広げられるであろう滑走路点検と、消防車両によるスタンバイまたは飛行機追従のオペレーションがどんな規模になるか、ということです。

 

緊急機の着陸後によくある典型パターンについて再度おさらいしましょう。

  • 緊急って言ってるけど、コックピット内の表示器に問題があっただけで、着陸してみれば機体に異常は何事もないパターン
  • 着陸してみたらコックピット内の表示器通りに飛行機が故障しているパターン
  • 着陸後に滑走路内で停止して動けなくなることが確定しているパターン
  • 飛行機を減速させる翼面の部品(フラップ、エルロン、スポイラー)が効かなくて、滑走路にハイスピードで接地するパターン
  • その他、トラブルの内容より異なる個別のパターン

次に、トラブルの内容から考えて、緊急機の着陸後どのような展開になるか考えてみます。

  • コックピットの表示器のみが異常で機体外部には影響ないため、着陸後の滑走路点検はなし。消防車両の滑走路脇待機のみ
  • 着陸時に何か部品落下や液体を残す可能性があるため、滑走路点検を実施、消防車両も飛行機の後方を追従する
  • 滑走路点検あり、消防車両追尾あり、加えて飛行機が着陸後に滑走路内で停止して動けなくなる
  • 着陸重量オーバーや機体トラブルの影響により、ハイスピードで着陸をしたため2次災害が起こる
  • その他、トラブルの内容より異なる個別のパターン

大体は上二つの結果に収まりますので、その場合の遅延は5分〜20分くらいですが、パイロットに状況を説明する前に、その想定の通りに事が進むか確認が必要です。

 

緊急機発生によりざわついてる管制塔内で、周囲の声を聞く重要なポイントがここ!(黒板に書いてある滑走路の絵を指さして。)

着陸後にここでどんな展開が待っているかを把握するために、情報は拾えるだけ拾っとけってこと。これが出来ないということは、着陸後の対応はどうすればいいかまとまっていない証拠です。

ぜひもう一度、お家に帰って飛行機の模型を見つめながら、緊急着陸後に想定されるケースについて再度考えてください。

 

明日は実際に体験した、緊急機に関する嘘のような本当の話です。

偶然の一致により苦悩する管制官の現場を描きます。

あなたにおすすめの関連記事

0 コメント

    コメントする

    CAPTCHA