航空保安大学校

訓練監督者の心構え

航空管制官になる前、大学在学中に塾講師のアルバイトを4年間続けましたが、国家公務員浪人生活と塾の講師を両立しては生徒に失礼な気がして、大学卒業と同時に辞めました。実は、航空管制官採用試験を何回受けてもダメだったら社員になるつもりでした。

どこの会社でも新人教育に困ってるという話を聞きます。最近の若い人たちは、という言葉を言いたくなる気持ちも分かりますが、会社のため、社会のため、何より自分とその新人の未来を考えてぐっとこらえるのがプロフェッショナルです。

 

子供も大人も受け取る感じは一緒

小・中学生の両親は、無限の期待を子供にかけて、塾に高い授業料を払っています。先生は生徒の成績を伸ばせなければクビです。生徒の選り好みをしてる場合じゃありません。指導するものは成長させることに最適化する、それ以外考える必要はありません。大人は感情をコントロールできるだけで、受け取る感じは子供と同じです。

 

成長は自立促進が第一、褒めてはいけない

褒めて伸びる子、というのは誤解を生む表現です。褒めて伸びる子は、褒められることに期待して勉強を頑張る自立が芽生えた子です。褒められることを嬉しいと思わなくなれば終わりです。大体、勉強をしたくない子を褒めても別に何とも思いません。一番効くのは、

先生が期待することをやめないしつこさ。

社会人としての心構えを持っている新人に教育は不要です。技術指導だけすれば自分で分からないことを打破して勝手に成長してくれます。人間は本来、〇〇として、というものに当てはまりません。男として、女として、先生として、いったいいくつの役があるか分かりませんが、教育と成長の観点からすれば、人として迷惑をかけないこと、でせっかくなら周りのためにも何か出来る人になれば十分かと思います。

 

ピグマリオン効果

自分が綺麗になると期待し周りも期待すると本当に綺麗になる、ということを象徴するピグマリオン効果は皆が知って損はありません。期待されるほど伸びる、っていうアレのことです。相手を成長させるには、ただ綺麗だね、って思いついたように褒めるだけではだめです。

男は気に入られたくて女性をいつも褒めるから困ります。見たままではなく影の努力を褒めるつもりで、髪型思い切って変えて良かったね!くらい言わないと、次も頑張ろうと思ってくれません。

見たままを褒めることは簡単ですが、期待を伝えるにはその人を見る努力と表現が必要不可欠です。

 

自転車の乗り方を教えるように

よく、自分の背中を見て育って欲しいと言う方がいます。一昔前ならそういうやり方でも通用したかもしれませんが、成長に最適化した方法とは言えません。見て学ばせるつもりなら、見て学べているかまで見ないと逆効果です。自転車の乗り方を教えるのに、いきなり格好良く乗りこなす映像を見せても何も得られません。バリバリ活躍する背中を見せても、どこを見て学べばいいかも分からない人には苦痛の時間です。

自分の成長を自覚させる

自転車に乗せて何も言わずに見守り、転びそうになったら初めて手を出します。次に、ここまでは出来た、って毎回しつこく言って自覚させます。そうして、ゆっくりながらも乗れるようになる頃には二人の信頼関係が出来上がるので、この段階になるまでは厳しいことは言わないでおきます。次の段階でガツンとやればいいんです。

 

怒ると叱るの違い

怒るのは感情的、叱るのは論理的、怒って子供を成長させられるのは親だけ、と塾に入ったばかりのとき言われました。感情的に何かを言うのは、信頼し合うと実感する仲でなければ副作用の恐怖が上回る、ということかと解釈しています。

感情的になりそうなときは、一旦何も言わない方が良いです。どう言えば伝わるか冷静に考えた上で、改めて叱るくらいじゃないと、本質を理解せず同じミスをすることに繋がります。恐怖は自立を止めます。ピグマリオン効果の逆をゴーレム効果と言いますが、見放されてるという実感は一瞬で土に帰らせてしまうほどモチベーションを下げる、ということの例えです。

 

少子化で人材不足、と嘆いても状況は変わりません。

教育は、いつの世も国を支える重要な要素です。

あなたにおすすめの関連記事

2 コメント

  • 返答
    なめこ
    2016年10月31日 at 6:45 PM

    こんにちは、いつも拝読させていただいております。
    私はパイロットと航空管制官の間でおこるコミュニケーション障害について事例研究しているのですか、パイロットと管制官のヒエラルキーはどちらが上だと思いますか?

  • 返答
    てっちりん
    2016年11月1日 at 7:33 PM

    コメントありがとうございます。パイロットは管制官に何かを要求しそれを許可するかどうかは管制官、という構造なので航空機運航に関しては管制官のほうが上です。よくネイティブのパイロットは、管制官をSirと敬称で呼ぶことからも関係性は明らかです。ただし、パイロットからの要求は交通状況が許す限り許可する、といった性質が管制業務処理規定にあるので、実質の運航では、パイロットから何か要求された瞬間、管制官は他機への影響を考慮してそれを実現する道筋を構築することも多々あります。

コメントする