航空管制官

台風で成田空港の管制官避難により滑走路閉鎖したニュースの専門的解説

航空管制官がメディアにどう扱われているのかとても解りやすい1日でした。こんなニュースを見なければ触れることすらなかった管制塔退避基準と、世間では気付きにくいニュースの裏側について書きます。真実かどうかは実際に確かめるまでもなく、インターネットのニュース記事を読むだけで推察できます。

航空業界の関連ニュースは、個別の航空会社が話題の中心になりがちなのであまり扱わないようにしていますが、台風で成田空港の管制官が避難したことは誰かに落ち度があるようなことではなく、管制官のバイブル第五管制業務処理規定とは別に各空港で定められた管制業務運用要領に書かれた基準の通りに避難しただけですので、このような時事であれば真実を伝えるためにも扱ってよし、と勝手に決めました。

成田空港の管制官が退避したニュース記事

各新聞社やTVが配信したニュースを時系列で引用して比較してみます。

NHK: 成田空港の滑走路閉鎖 管制官が避難

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国土交通省成田空港事務所によりますと、成田空港では、風速が25メートルを超えて管制塔の揺れが大きく管制業務ができなくなったとして、午後2時20分、2本ある滑走路のいずれも運用を停止し、航空機の発着ができなくなっています。成田空港事務所によりますと、管制塔にいた管制官などは、安全確保のため避難しているということで、滑走路の再開の見通しはこれまでのところ立っていないということです。

引用元: http://www3.nhk.or.jp/

朝日新聞: 成田空港で管制官が避難 滑走路を一時閉鎖 台風9号

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 台風9号の影響で、成田空港では22日午後2時20分から2本の滑走路がいずれも閉鎖され、同3時27分に再開した。国土交通省成田空港事務所などによると、滑走路閉鎖は管制官が一時的に管制塔から避難したため。当時の風速は避難基準の30メートルを超え、高さ約90メートルの管制塔が大きく揺れていたという。

引用元: http://www.asahi.com/

【台風9号】

強風で管制官が一時避難 成田、滑走路1時間閉

 台風9号による強風の影響で、成田空港は22日午後2時15分~午後3時、管制業務を休止した。風による業務休止は開港以来初めて。

 国土交通省によると、管制塔の退避基準(平均風速毎時55ノットが2分間)を上回る60ノットの風が吹いたことから、管制官らは管制塔から退避した。離陸は直前20分以上前から、着陸は直前1時間以上前からできない状態だった。

 成田空港の管制業務は東日本大震災時に休止したことがあるが、強風の退避基準による休止は初めて。

 強風の影響で、同日15時までに15機が関西空港などに着陸空港を変更した。

引用元: http://www.sankei.com/

最初にニュースを知ったきっかけがNHKの記事でした。管制塔からの避難の項目にある、台風による退避基準が適用されたケースは、8年間の経験で見たことも聞いたこともありませんでした。東日本大震災が発生したときは、退避基準を適用するもなにも管制塔のなかがグチャグチャで、業務が出来る状態になかったので退避したという話は聞きました。

管制塔からの避難規定自体、とても稀なケースを想定したものですし、台風による退避基準が適用されるほどの風が吹いていれば、航空機の離着陸は出来ないし行われない、言い換えれば航空会社が欠航を判断して滑走路に向かうことすらしない、というのが通常です。

ところが成田空港は国際線だらけで、国内便のように欠航して振り替えるという対応が容易ではないことから、滑走路まで飛行機を走らせて少しでも望みがあれば離陸するというケースも発生します。同じ国際線でも到着機の場合は、残存燃料の関係から台風が過ぎるのを待って到着するのは諦めて、あっさり他の空港にダイバートします。旅客も納得しやすいですしね。

bigtyphoon写真は九州に上陸した過去最大級の台風の気象映像です。

成田空港の滑走路閉鎖は管制官が退避したから

という以前に関東直撃の台風で離着陸はまず不可能です。確かに滑走路を閉鎖する理由としては管制官の退避になるのですが、すでに強風が色んなものを滑走路上に落としているでしょうから、そういった観点からも滑走路閉鎖は当然ともいえます。なので結局、一連のニュースをまとめると、航空管制官が基準に従って退避しましたが台風なので飛行機もいませんね!くらいのことです。

最初に目にしたNHKの速報記事は、誤解を産みそうな文章に感じます。もっとも重要な、管制官が退避する以前に離着陸できる状態ではない、ということと、管制官は規定に従って退避した、ということが抜けています。

速報とは速いが本質まで捉えきれていないもののようです。

約2時間後に出された朝日新聞の記事には退避基準が載っています。さらに1時間後の産経新聞の記事にはそもそも離着陸できる状態でなかった、という記述が見られるようになり20時頃には、Yahoo!のトップニュースに引用されました。航空管制官の立場を思う身としては、初めから誤解のないように書いてほしいものです。

本質の説明がしっかりと世間に届くまで、半日近くもかかっているんですね。

ブログで航空管制官や航空業界の本質を伝えるには、半年あっても足りません。

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