航空保安大学校

判断に迷ったら

分かれ道

民間企業の方が国家公務員を羨ましいと感じる話は聞きますが、逆に公務員だから辛いという話を聞いたことはあまりないでしょう。公務員は直接的には国民のために働いていますが、同時に公務員組織を汚さないために私生活でも意識して正しく過ごす必要があります。一般の会社員がしても些細な不祥事で終わることが、公務員ならマスコミが取り上げて一躍有名人です。情報漏洩を気にせずに飲み会で会社の愚痴でも何でも自由に話せるだけ健康的です。

 

いつも14時30分頃に到着するタイ航空のA380型機に、

その日は友達の家族が乗っていました。航空管制官ほど到着時刻を正確に分かる人もいないので、ということで空港の展望デッキにて到着を待つ友人に、家族が乗っている飛行機は予定通り14時30分ころ到着することを教えてあげました。

thai-a380

管制塔に戻って次のポジションを確認すると、ちょうどその航空機が到着する滑走路のタワー(飛行場管制)席だったので、ついでに自分が指示して家族が乗る飛行機を到着させたことを後で伝えて、何かおねだりするネタにしようと気楽に考えていました。

 

ところが、何てことない真昼間の管制日和りにも困ることはよく起きます。

 

世界最大の総二階建て旅客機であるA380が滑走路に向かって降下しているのが肉眼で見えたのと同時くらいに、出発のため地上走行で管制官にアピールするかのごとく出発機が呼び込んできました。何をアピールしているかというと、パイロットにも管制官と同じように進入中の到着機が数分後に滑走路へ着陸することが自分で見えて分かっていて、その到着機よりも先に離陸したいから地上走行の速度を上げて管制官に離陸許可を貰えるようアピールをする、ということです。

出発機に離陸許可を出した場合、到着機が滑走路端を通過するまでに出発機が離陸できなければ到着機はゴーアラウンドです。別にそんなギリギリを狙わなくても、到着機が滑走路に着陸するまで出発機を待機させればそれで済みます。数分の遅延を出発機に強いるだけの話です。ゴーアラウンドになった場合、到着機と展望デッキでそれを待つ友人に追加20分の遅延が発生します。

出発機のパイロットは、速くも遅くもない速度で滑走路に向かってきました。全速力で走行している様子ではないので、まだ離陸を許可してもコックピットの離陸準備が整っていない可能性がありました。

到着機の前に出発機が出るかどうか、判断に迷い指示が遅くなるほど状況は切迫します。

 

判断に迷ったら

管制官はこのような判断の連続です。判断に迷ったらどうするのか、と聞かれてもそれ以上の答えはありません。ただ、一歩前に踏み出すなら、転んだときに手を付けるようにしておかなければなりません。あの日は、離陸許可を出して到着機が着陸する寸前で出発機の離陸は間に合いましたが、間に合わなくて到着機をゴーアラウンドさせても安全な飛行は確保できる、と思ったので離陸許可を発出しました。

判断に迷うなら止めておけ、管制官が訓練中に一度は聞く大怪我をさせないためのセリフです。

判断に迷ったら行け、失敗を恐れて守りに入ろうとする自分を奮い立たせる言葉です。

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